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DeNAの勢いが止まらない。17日の広島戦は敗れたものの、7カード連続勝ち越しは球団として51年ぶり。貯金10で巨人に3ゲーム差の首位を走る。
今季、1点差ゲームは両リーグ最多の12勝(5敗)。逆転勝ちは13度を数える。05年以降、Aクラスは一度もないが、周囲からは「日本一となった98年の再来」を期待する声も聞こえる。評論家の山崎裕之氏は「中畑監督の選手起用、選手操縦がうまくいっている」と、こう続ける。
「抑えに抜擢したドラフト1位新人の山崎康(亜大)が16セーブを挙げているのは大きい。16日の広島戦で完投勝利を挙げた井納にしても、それまで2戦続けてKOされ、開幕から任されていた3連戦の初戦を山口に代えた。井納からすれば面白くなかっただろうが、中畑監督は『あいつは俺と同じですぐにテングになる。鼻っ柱を折ってやらないといけない』とコメントしていた。試合前に『きょうの試合は任せた』と送り出したのを見ると、井納の性格を踏まえて反骨精神をあおったのが奏功したのだろう。キャンプでは『今年は筒香と心中する』と言っていた。4番と主将を任された筒香は監督の気持ちに応える活躍を見せている。今年にかける監督の意気込みが勝利も重なって選手に浸透しつつあるのでしょう」
優良選手を発掘するスカウティングも見逃せない。今季は山崎康が成功し、昨季はドラフト4位の三上が1年目から21セーブ。13年ドラフト5位の関根が2年目の今季、中堅のスタメンを争い、昨季11勝を挙げた井納は12年ドラフト3位。高田GMは「1位は一番良い評価の選手」として競合も辞さず、「すぐに役立つ選手がほしいのはもちろんだが、大事なのは2位、3位でどれだけ戦力になる選手を取れるか」と言ったことがある。
昨オフ、主砲のブランコを解雇し、巨人からロペスを獲得。高田GMは打撃に加えて高い守備力を期待していた。実際、5番として7本塁打をマークするだけでなく、一塁守備でも「ロペスがきちんと送球を処理してくれるから、他の内野手は相当助かっていると思う」と、馬場内野守備走塁コーチ。前年、リーグワーストだった失策数が今季は22個でリーグ3位と改善している。
チームに変化が表れつつあるDeNAだが、不安は投手陣だろう。チーム打率.261はリーグ2位、161得点、31本塁打はともにリーグトップも、チーム防御率3.27、152失点はリーグ5位。過去、打高投低のチームが優勝した例は85年阪神、01年近鉄など少数。果たしてDeNAはこのまま首位でゴールテープを切れるのか。
■夏場以降、体力と気力が持つか
評論家の野口寿浩氏は、「まだチームを見極めるには時間が必要。捕手は黒羽根、高城、嶺井がいて正捕手が固定できていない。投手ごとの捕手起用でもいいのですが、正捕手が固定されると、チーム全体の安心感が違ってくる。また先発投手も山口をはじめ、いい投球をした次の登板で打ち込まれるなど、安定感に欠ける。ここが改善されるかどうかが今後のカギを握ると思う」と、指摘する。
一方、前出の山崎氏は、「当時の阪神や近鉄とは打線の構成が違う。今のDeNAの方がバランスがいいのではないか」とこう続ける。
「投手力に多少の不安はあるが、昨季までと違い、1点差試合をモノにしているし、逆転勝ちも多い。抑えの山崎康をはじめ、セットアッパーの田中という軸がいることが大きい。1番の石川を筆頭に足を絡めて効率良く得点を挙げているし、日替わりでヒーローが出ているのは、チーム全体で戦えているからこそ。『先発が点を取られても、2~3点ならひっくり返すことができる』『九回まで粘れば勝てる』『相手よりも1点でも多く取れれば勝てる』というムードがチームに出来上がりつつあると思う。故障者が続出すれば話は別だが、今季はガタガタと落ちていくことはないだろう」
98年優勝メンバーの駒田徳広氏がこう言った。
「若手が育ち、主軸がしっかりしてきた。他球団が新旧交代を迎えていることもあり、このまま突っ走る要素はある。できれば球宴までに(2位に)7ゲーム差をつけてほしい。DeNAは優勝から16年間遠ざかっており、今の選手で成功体験があるのは三浦くらい。(巨人など)試合巧者のチームがじわじわ追い上げてくるだろうから、今年はちょっと届かないな、というくらいの差をつけるに越したことはない。あとは夏場以降、体力、気力が持つか。チーム状態が落ちた時は1勝への足取りが重くなる。98年も夏にチームが調子を落としたが、ミーティングで『(自分は)若手、中堅時代に優勝した。でも、ベテランになってからはない。みんなと同じで優勝する自信はない。怖い。ダメだったら来年やってやろうぜ』と声を掛けた。苦難が訪れてもそれを飛び越えるくらいの気持ちを持って、守りに入ることなく戦って欲しい」
今季は優勝の大チャンスを迎えている。