| MENU | MENU | MENU | MENU | MENU | MENU |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2012年5月29日にサービスを開始した、ITエンジニアのための問題解決コミュニティ「QA@IT(キューエーアットマークアイティ)」は、ITエンジニアが日々遭遇する課題やトラブルを質疑応答形式で解決&共有するサイトとして、たくさんの質問と回答を蓄積してきた。中でも、レベル4000超という圧倒的な数字でサイト内ランキングトップを独走するのが「flied_onion」こと、北原隆博さんだ。
北原さんは、システム開発会社に勤め、認定スクラムマスター/認定スクラムプロダクトオーナーの資格を取得するアプリケーションエンジニア。「QA@ITは、自分に足りないスキルや経験の幅を広げてくれる貴重な存在」と語る北原さんに、QA@ITとの出会いや普段の使い方、仕事への生かし方などを語っていただいた。
●QAサイトを利用してスキルアップ!
QA@ITにユーザー登録して、質問に対する回答を始めたのは2013年3月です。それからほぼ毎日サイトを訪れ、日課をこなすように回答を続けてきました。Google Chromeなどのブラウザーでは、よく訪れるサイトが順番にホーム画面に表示されますよね。ずっとそのトップに居続けているのがQA@ITなんです。
QA@ITを使い始めた大きな理由は、自分に足りないスキルを得たり、経験の幅を広げたりしたいという気持ちです。スキルや経験を得るためには、まずは自分の考えを伝えることが大切で、そのために自分の活動をブログやCMS、SNSなどで公開すればいいとよく言われます。例えば、Joel Spolsky(ジョエル・スポルスキー)氏のブログ「Joel on Software」の「コンピューターサイエンスの学生へのアドバイス」というポストには、こんな一節があります。
どんな分野でもいいから、毎週、あるいは毎日文章を書く宿題を出す授業を見つけることだ。日記やWebログをつけ始めるといい。書けば書くほど、書くのは楽になる。そして書くのが楽になれば、もっとたくさん書くようになるという、プラスのサイクルができる出典:Joel on Software「コンピューターサイエンスの学生へのアドバイス(Advice for Computer Science College Students)」
スポルスキー氏は、QAサイトの「Stack Overflow」を作った人で、いろいろと影響を受けました。書くこともその一つで、自分でもブログや日記を書き始めてみました。でも、長続きしませんでした。そんなとき、「QAサイトだったら続けられるのではないか」と思ったのです。「質問に答える」という形ならば、書くネタに悩む必要はなく、自然に続けられるはずだと。
実際に始めてみると、与えられた課題に答えるように無理なく続けられると分かりました。質問に答えることで足りない知識やスキルを整理できますし、足りない部分を調べることで新しい知識やスキルを得ることにもつながります。
書いたり説明したりする技術は、仕事でも求められます。他人の経験は、たとえ悪いものであっても、バッドノウハウとして仕事に生かせます。QAサイトのそうしたメリットをうまく利用して、自身のスキルアップにつなげてきたという感じです。
●大切なのは「相手の状況に合わせた代替案のアドバイス」
基本的には、質問はせずに回答専門です。回答に費やす時間は1日数時間。昼休みや通勤時にスマートフォンでチェックして、できるものはその場で回答しています。その場では調べ切れないものや自分で試す必要のあるものは自宅に帰ってから。ただ、自宅は誘惑も多いのでそれを避けながらですが。
私は文章を書くのが苦手で、スピードも遅い方です。1つの回答を書くのに2時間ぐらいかかることもあります。うまく伝えようと書いては消してを繰り返し、休日のほとんどをQA@ITの更新に割いたこともあります。
質問を選ぶときは、自分が答えられる質問かどうか、質問に答えることで新しいスキルが得られるかどうかで判断することが多いです。すでに他の誰かが回答していて補足する必要がないと思ったら、無理に回答はしません。
回答するときに心掛けているのは、「相手の状況を踏まえてアドバイスすること」です。回答をしていると、相手の状況が分からなくて、自分の都合の良いような回答をしてしまうことがままあります。それがきっかけで言い争いに発展してしまうと、お互いに気分を害することになります。
相手の状況に合わせてアドバイスできれば、お互いが何を知り何を知らないのかが分かり、問題解決がスムーズに進みます。これらはサーバントリーダーとも言われるスクラムマスターにも必要なマインドです。
質問によっては、OSのセットアップから始めて、質問者と同じような環境をそろえて、現象が再現するか確認することもあります。そういう意味では、最初に、どのような環境でどんなことをどんな手順で行ったかが書いてあれば、再現性を確認しやすいので、回答が付きやすくなると思います。逆に、情報の後出しはやめてほしいなと思います。
始めから詳細に全ての情報を書くことを強制するつもりはないのですが、後出しで情報が出てくると、回答する方の手間も増えます。もちろん、何が分からないかが分からないというケースもあります。その場合は「何が原因で困っていて」「何を解決したいのか」の2点を明確にしてくれれば、回答しやすいと思います。
●仕事で行き詰まったら外に目を向けよう!
自分に足りないスキルや経験を得ようと思った背景には、仕事で行き詰まりを感じていたことがあります。VB.NETやC#をメインにしたアプリケーション開発を10年ぐらい続けてきて、その分野でのスキルや経験、社内のポジションは、それなりのものになりました。
その一方で、社外を見渡してみると、自分には到底追いつけないように思える人たちがたくさんいました。ブログなどで自分の考えを積極的に公開している人やOSSコミュニティの活動などを見ているうちに、「新しいことに取り組まないと自分の将来はない、少なくとも10年くらい遅れている知識を取り戻さないと先はない」と感じるようになったのです。
そのうちRubyやPythonといったWeb系の言語を勉強するようになりました。関心が同じ人に関わりながら勉強を続けてきましたが、自分の周囲だけではいずれ限界がきます。自分が一番詳しいという状況になると、一人で自己研さんしながらモチベーションを維持するのがだんだん難しくなってくるのです。
QA@ITのようなQAサイトを活用しようと思ったのはそんな時です。QA@ITの前身である「@IT会議室」を2004年ごろから利用していたこともあり、掲示板やQAサイトには「技術者同士が教え合える、切磋琢磨できる場」としての魅力を感じていました。
職場にお互いに刺激を与え合える人がいると、スキルや日々の作業の改善のいい動機付けになりますよね。同じように、QAサイトでも「そこに質問者がいる」ということが動機付けになって、「自分がやらねば」という使命感めいたものを感じていたように思います。
●エンジニアとしての履歴を社外に残す
「やるならばプロとして」という思いもありました。「1円でもお金をもらったらプロ。やるならばプロらしく振る舞おう」ということです。エンジニアになる前に声優を目指していた時期があって、養成所にゲストで来られた演出家に教えていただきました。こうした「プロ意識」は、仕事に取り組むときに大事にしている信条で、自分の一番ベースになっている部分と言ってもいいです。
QAサイトへの回答でお金をもらっているわけではないのですが、そのくらいの気持ちで取り組んでいれば、仕事で新しいことを求められても対応できます。社外で学んだことを会社の仕事にもフィードバックしていくことができると思います。
社外にエンジニアとしての履歴を残せば、自分のキャリア形成に役立つはずという気持ちもありました。QAサイトでの活動を職務経歴書のように見てもらえます。転職をしようと思った時に、会社の仕事で得たことを社外の人に正しく伝えるのは案外難しい。そういうときに経歴書代わりになるものがあれば、実績を客観的に判断してもらいやすくなります。
私は、もともとはものぐさな人間です。仕事でやさぐれて、家ではネットゲーム三昧だった時期もありました。「これではマズい」と勉強会に参加しようとしたけれど、申し込みが億劫(おっくう)で行動に移せなかった時期もありました。
QAサイトで質問に答えることは、そんな自分の性格に向いたスキルアップのやり方だったと思います。もちろん、回答に対して反応があったり、回答を踏まえて議論がより深まっていったりするのを見ると素直にうれしいし、やりがいも感じます。また、獲得したポイントでレベルが上がっていくのでゲーム感覚で楽しめるのもメリットです。
●「人の話を聞く」ことの大切さを実感
QA@ITでの活動は、もう生活の一部のようになっています。オンとオフでいうなら、QA@ITを含めてオンで、今はオンの時間をもっと増やしていこうとしているところ。ただ、回答をきちんとしようとすると、すごく時間がかかります。自分が理解する時間はそれほどではなくても、理解したことを相手に分かってもらう時間は、すごくかかります。
ですので最近は、「使命」というよりは、自分の時間にゆとりを持ちながら回答するようにしています。ゆとりを持つことで、今まではできなかった活動も始めています。例えば、QAサイトを通じて知った技術について詳しく触ってみたり、セミナーに出かけていったり。
QA@ITに限ったことではないのですが、目的と手段、理想と現実を理解した上で、意識してWeb上のサービスを利用すると、今までとは違うものが見えてくると思います。「この分野は知っている」とか「こうに決まっている」といったことは案外ただの思い込みでしかないものです。思い込みや誤解のままある時間を過ごしてしまうのは、非常にもったいないです。
私も、QA@ITからたくさんの「気付き」を得てきました。質問に答えるうちに、人の話を聞くことの大切さを身に染みて感じることもできました。最初は軽い気持ちでいいので、まずは試してみる。いい刺激になると思います。
引用:「QA@IT」ナンバーワン回答者 flied_onionさんに聞く「なぜ私は、無償で質問に答え続けるのか」